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天王寺高校

自由闊達・質実剛健を時代に沿った形で実現
大阪府立天王寺高等学校

110年の歴史と伝統を継承

 天王寺高校は、明治29年、大阪府第五中学校として誕生した。以後、3万人を越える卒業生を輩出する創立110年の大阪有数の伝統校である。

 天王寺高校の校訓は「自由闊達・質実剛健」。この精神は『天中』時代から受け継がれたもので、現在もこの校訓の下、文武両道の精神を備えた人間の育成に力を注いでいる。

校訓を実現するために…

 「天王寺高校の教育方針は『授業第一主義』と『鍛錬主義』です。これは校訓でもある『自由闊達・質実剛健』を身につけた人材を育むには、文武両道を備えさせる必要があるからで、生徒たちには、何よりも授業を大切ににし、授業に集中することにより進路実現を果たして欲しいと考えています。また、授業や多彩な学校行事、個々に適した部活動など、学校生活のあらゆる場で自己鍛錬を行なう−。その姿こそ、天王寺高校が望む生徒像であり、110年の伝統を継承する『天高生』のあるべき姿だと考えています」と天王寺高校の校長先生は語っています。

  そんな『天高生』を継承するためにと、天王寺高校では常に新しい取組みについて検討。例えば、他校が平成14年の学校週5日制実施以降に取り入れられた2学期制を、平成6年度より導入したのもその一つである。さらに土曜日が休みになった平成14年度からは平日45分7時限授業とすることで、以前同様の35単位も存続させている。

 こうした取組みの結果、現在の授業日数は年間190日で、生徒たちは学科、選択教科・科目、文系・理系によって履修単位数の差はあるが、ほぼ105単位を履修。当然のことながら、どの授業においても自習はほとんどない。授業日数、単位数、そして自習なし。これらこそ、天王寺高校が『授業第一主義』を教育方針としている証である。

進路希望を叶えるためのカリキュラム

 天王寺高校には、【普通科】6クラスと大阪府内全域から入学できる【理数科】2クラスがある。しかし、どちらの科も大半の生徒が国公立大学への進学を目指しているため、若干【理数科】では理科・数学の単位数が多いが、基本的には全科目バランス良く学べるカリキュラム体制が取られている。

 また天王寺高校では、【普通科】の生徒たちがより進路希望を叶えやすいようにと、通常、3年生から行なわれる理系・文系別の指導を2年生の後期からスタートさせている。ただし、この時点ではクラス替えは行なわず、「理科選択」の授業時間をかえることで、理系・文系を分けている。そして、3年生からは本格的にクラス単位で理系・文系に分かれ、目標を同じくするもの同士が切磋琢磨していくということが基本である。しかし、実際には2年生の前期から「理科選択」で物理か生物を選択しなければならないので、1年生後期から理系か文系かを考える必要があるようです。さらに現在は、3年生【普通科】の後期に生徒の進路実現のための講座が設置されています。これは「総合的な学習の時間」を活用したもので、小論文、数学や理科の演習などから、音楽、体育、造形などの実技に至るまで、全9教科を網羅した講座の中から、個々の生徒が自分の進路にあわせて2講座を選択できるものです。しかも、理系と文系別に設置される講座もあるというから、より多くの生徒の夢を支える試みとなるに違いないと思われる。

科学技術立国日本の次世代リーダーを育む天王寺高校“理数科”

 天王寺高校に【理数科】が誕生したのは、平成5年です。当初は1クラス40名だった理数科も、平成9年からは2クラスに。現在、各学年80名の生徒が将来の技術者を目指し、勉強に励んでいる。

 天王寺高校理数科の特長の一つは、数学・理科の少人数展開授業にある。基本的には20名体制で指導が行なわれるので、個々の理解度を確認しながらハイレベルな授業が進められている。

  また天王寺高校理数科のみの教科・科目、行事が多彩なことも魅力の一つである。まずは、1年生の8月には「大学見学会」が行なわれる。平成17年度は、大阪大学において、医学部教授による講演会と同学部の研究室と施設の見学や工学部の研究室見学を実施。さらには、クラス単位の合宿もあり、この合宿を経験することで、生徒たちは天王寺高校理数科に在籍するための心構えを身につけるという。

 そして、2年生では「集中セミナー」を受講。まず生徒たちは、7月下旬に京都大学と大阪大学の教授陣5名から5日間、90分2コマの講義を受け、それぞれのレポートを作成する。さらに2泊3日のクラス合宿に参加し、京都大学の施設見学会と講演会、民間企業見学を終えれば、1単位が認定される。かなりハードではあるが、天王寺高校理数科の名物行事として、欠かせないものとなっている。

  3年生には、より総合的思考を高めようと「理数セミナー」が用意されている。前期は、5〜10名程度の小グループに分かれ、各グループが物理・化学・生物・地学からテーマを選んで研究を行い、研究の成果を9月に発表。そして後期は、数学の到達度と必要度によりいくつかのグループに分かれ、志望大学の入試問題を素材に、数学のゼミナール形式の授業を受ける。もちろん、こちらも生徒自身による研究が行なわれ、最終的には研究発表、討論会と進められる。その他にも、学年ごとや希望者を対象とした講演会、見学会も随時開催している。その一例が関西サイエンスフォーラムなどの協力による「出前講演会」で、毎回、大学や企業から最先端の研究者を天王寺高校に招き、講演会を実施している。なお、3年生の「理数セミナー」と1年生のクラス合宿以外は、普通科の生徒も参加が可能となっている。

  また普通科の生徒が理数科に混ざり、よりハイレベルな科学に触れようとする一方で、天王寺高校理数科に入学後、文系への進路変更を希望する生徒もいる。そのような生徒に対しては、「理数セミナー」の代わりに国語の講座を設け、古文・漢文の授業を行うなど、臨機応変に対応している。その結果、毎年約1割の生徒が、法学部や経済学部、文学部などに進学している。

 しかし、あくまで天王寺高校理数科は理系の専門学科であるので、入学後に進路変更するにはそれなりの覚悟が必要だという。

スーパーサイエンスハイスクールとして

 天王寺高校は、平成16年より文部科学省からスーパーサイエンスハイスクール(以下SSH)の指定を受けた。

 これまでも理数科中心に科学分野の教育に力を注いできた天王寺高校ではあるが、この指定を受け、更に新しい取組みが実施されている。それは理数科を対象とするもの、学年を対象とするもの、天王寺高校全体を対象とするもの、そして、学外との連携の4つに分けられる。

  「天王寺高校はこれまでもいろいろな形で生徒たちの興味・関心を高める努力をしてきましたが、公立高校としての限界がありました。しかし、SSHに指定されたことにより、いろいろな問題をクリアすることができました。そのひとつがヒューマン型ロボットの購入です。大小あわせて4台を購入し、現在、天王寺高校理数科の生徒が『理数科セミナー』で研究しています。」と天王寺高校の教頭先生は語っています。

生徒の夢を叶えるために…

 国公立大学への進学を希望し、その夢の実現に向け、日々の高校生活を送る天王寺高校生たち。そんな「天高生」を支えるのは、「授業第一主義」で行なわれる授業、そして、放課後の補修や講習会である。

 更に、学校が休みとなった土曜日も無駄に過したくないと、年間28回ほど開講される「桃蔭セミナー」に、生徒たちも進んで参加する。このセミナーは自学自習を原則とするが、常に現役大学生OBが5、6人参加。生徒たちは、彼らに自由に質問できるというから、自学自習には最適な学習環境といえる。ちなみに、この「桃蔭セミナー」に登録しているOB数は毎年30名ほど。彼らは後輩たちのためにと、自ら志願して登録している。

  更に、天王寺高校では、生徒たちの夢を叶えるためには、早い時期から明確な進路目標を持たせたいと、1年生から年間数回の進路講話を開催している。また、1年生の11月には「総合的な学習時間」の一環で「社会人講演会」を実施。例年、30〜40歳代のOB10名ほどを講師として招き、職業選択のポイントや現在の仕事について話を聞く全体会と、希望別に各会場に分かれて質疑応答を交えた講演を聞く分科会を開いている。講師の職業は多種多様で、体験に基づいた話が聞けるだけに、夢と現実に戸惑いながらも、天王寺高校生にとっては、しっかりとして職業観を身につける機会となっている。

 このような進路指導を受けるためか、天王寺高校では、ほとんどの生徒が途中で進路変更することなく、あくまで第一志望を貫いている。

心のケアも万全に

 何事にも前向きに取組み、大学進学の夢も確実に叶えていく「天王寺高校生」。しかし、彼らも悩み多き高校生であるとこには変わりはない。そんな悩みを抱える天王寺高校生たちの心の支えになればと、天王寺高校ではカウンセリング室を設置し、担当の教師9名が当番制で昼休みと放課後に生徒の相談に応じている。さらに毎週木曜日の放課後にはスクールカウンセラーが在室している。

 担任や教科担当の温かな眼差し、生徒たちを迎え入れてくれるカウンセリング室の存在、そして、専門のカウンセラーによるアドバイス。これらの心の支えがあるからこそ、天王寺高校に入学した生徒たちは、日を追うごとに「天高生」らしくなっていくのであろう。

学校公開することで「天高」への理解を深める

 天王寺高校では、5月の「運動会」と9月の「文展」を一般公開している。これは、天王寺高校在校生の保護者や卒業生だけでなく、地域住民や「天高生」になりたいという多くの中学生たちに、真の「天高生」の姿を見て欲しいと望むからだ。また、天王寺高校への入学を望む中学生の保護者を対象に、年3回ほどの天王寺高校説明会を開催。そして、中学生を対象にした「天王寺高校体験授業」も設けている。

  更に、地域住民に学びの場として広く天王寺高校を開放しようと、「桃蔭文化フォーラム」を新しい試みとしてスタートしている。これは、天王寺高校卒業生やPTA会員の協力の下に行なう教育支援活動のひとつで、地域住民も広く受け付けている。これもある意味、「天高」を知る機会のひとつになりつつあるようだ。

  「『天高は勉強ばかりしている』と言われることがあります。確かに『授業第一主義』の下、天王寺高校の生徒たちは一生懸命に勉強しています。でも、決して勉強だけの高校生活を送っているのではありません。運動会や文展などの行事も真剣に取り組んでいますし、何より、天王寺高校生の約90%が部活動に所属し、活躍しています。それにいろいろな講演会などを聴くことで、自分の進むべき道についても、日々、考えているようです。これからの我々、天王寺高校の教職員の課題は、『天高生』を正しく理解していただくために、真の『天高』の姿を校外の方々にアピールしていくことかもしれませんね。」と天王寺高校の教頭先生が微笑みながら話してくれます。

  勉強と行事と部活動、いずれにも精一杯に取り組みながらも、すばやく気持ちを切り替える・・・。そんな昔ながらの文武両道を全うする高校生がいる学校。それが天王寺高校なのかもしれません。

天王寺高校のSSH事業とは…

1.【理数科】を対象
 2年生に、プログラミングやアプリケーションの技術、それを活用する能力を育成することを目的に、「数理科学T」を設置。情報教育の基礎と応用、コンピューターを利用した数学的手法や思考力の育成、さらにはコミュニケーション能力を高めるためのWebページの作成、プレゼンテーション能力の育成を目的としたパワーポイントなど、様々な指導を行なっている。
 また、3年生の「理数セミナー」でも、化学系の研究課題をテーマにした生徒たちが、大阪大学の助教授と院生2名から実験指導を受けたり、これまでになかったテーマに挑戦するなど、新しい取り組みも実施されている。 

2.学年を対象
  2年生全員が後期に履修する「総合的な学習の時間」の「課題研究」をサポート。
初めて実施された平成16年度は、普通科と理数科の生徒の中で、科学分野のテーマを選んだ1組ずつを指導。その後、どちらの研究もクラス代表に選ばれ、更に、理数科の生徒の研究は1位に、普通科の生徒の研究も3位に入賞。SSHの取組みが普通科の生徒にも良い刺激を与えていることの証となった。 

3.学校全体を対象
 天王寺高校には、これまでも物理、化学、生物のそれぞれの研究部があったが、物理研究部は休部、残りの研究部も部員が5名前後と低迷していた。そこで平成16年春、天王寺高校在校生に対し「SSH」を説明するとともに、勧誘活動を実施。その結果、部員数が増え、さらに物理研究部も復活した。
また、部活動の活性化対策として、「SS科学実験講座」も平成16年度に開講。この講座は天王寺高校が地域の科学教育活動のセンター的な存在になればとの思いを込めて開講したもので、化学研究部が中心となり、中学生を対象に実験講座を2回開催した。
また、物理研究部が、物理教室前に物理学者の顔写真と業績、実験器具・装置や歴史的著書などを提示したことも、天王寺高校の生徒たちの興味関心を高めるのに一役買っているようである。

4.学外との連携
 これまでの試みを更に強化したのが、天王寺高校と大学や民間研究機関との連携である。天王寺高校がSSHに指定されたことにより、理数科の「集中セミナー」や「理数セミナー」の充実度が増した。
 更に、天王寺高校理数科の生徒を対象に行なってきた講演会を発展させる形で、天王寺高校全生徒から希望者を募る「先端化学セミナー」を計画し、平成16年度は「材料化学セミナー」と銘打った講演会を、平日の放課後に3回、民間研究機関から講師を招いて実施した。

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